映画も興行である以上、売上をある程度、立てる必要があります。
多くの人が携わって作品にするだけに動く金額も大きく、できるだけ興行的な失敗は避けたい。という背景から、原作ありの映画作品は少なくありません。
原作があれば、原作ファンの鑑賞見込みやある程度の出来が目に見えるため制作資金を集めやすいという背景もあるようです。
今回はそんな映画原作。その原作者に支払われる原作使用料の世界(邦画)を除いて見ましょう。
映画化の原作使用料は?
そもそもですが、原作の使用料の目安はあるんでしょうか?
まず、明確に決められたものはありません。国内においては、日本文藝家協会の規定第25条「映画制作及び上映等における著作物の使用料は、番組制作費や提供価格等を斟酌し、1000万円を上限として利用者と本協会が協議して定める」という取り決めがあり、これを一定の目安としているケースが多いようです。
原作使用料のボリュームゾーンは200万~400万円。製作費が高額な場合や、原作、作家の知名度が高ければ相対的に上がるが、高額でも700万円程度。原作者はこのうち約60~80%を受け取る
出典:日経新聞(200万~400万円は妥当か、映画原作料のお値段)
原作者も不満? 『海猿』『テルマエ・ロマエ』原作使用料のリアル
映画だけではなくドラマでも原作者を蔑ろにしたという報道は少なくありませんが、数十年前から原作者が不満を持ったケースは少なくありません。
原作者がNOを提示していても映像化されている事実がある以上、なかなか原作者も深く映像化に立ち入らないのかもしれませんね。
作品により原作者との距離感は様々で、映画化をポジティブに捉える方や脚本などまで口や手を出す原作者もいれば、版権料を支払うだけでノータッチという方もちらほら。
例えば国内で大ヒットを記録した『テルマエ・ロマエ』も興行収入58億円を叩き出しましたが、原作者のヤマザキマリ氏に支払われた原作料は約100万のみだったと某バラエティ番組にて本人が告白しています。(2013年)
58億円という売上(興行収入)に対して、原作使用料約100万円は0.017%
また、同じく邦画のヒット作である『海猿2』は原作使用料は約250万円だったと言います。
『海猿2』の売上は約71億円でした。
71億円という売上に対して、原作使用料の約250万円は0.035%
映画がヒットすればまだ良いですが、酷評されるような作品になっていれば原作にも残念なイメージが付き纏うリスクもある。それが原作の売上低下に繋がる可能性もある訳で、約100万円〜約250万円を多いと捉えるか少ないと捉えるかは人によりますが、やはり多くはないでしょう。
さらに『テルマエ・ロマエ』に限ればですが、この約100万円は原作者が合意した金額でもなく、出版社が原作者に原作使用料として事後的に提示した金額でした。映画化は出版社なりのマーケティング施策でしょうが、原作者の意図を反映しない形で出版社が映像化を進めていることもしばしばのようです。
ちなみに、『海猿』原作者の佐藤秀峰 氏は約250万円という金額を不服に思い、その後は代理人を立て、三作目以降はそれまでの約20倍の原作使用料を得ることに成功したとか。
出典:『海猿』原作者・佐藤秀峰 氏のTwitterより
映画化による原作者のメリット
では、原作者は映画化によるメリットはないのか?
当然そんなことはありません。(メリットに納得できるかは別問題)
映画化を受けて原作の発行部数が増え、原作者も原作の印税という形で映画化の恩恵に預かれる、と言うのが定説です。
映像化のクオリティにある程度は左右されるものの、やはり映像化によるメディア展開は原作だけに比べて世間の目に触れやすいのは事実です。
一例として、2024年2月現在、国内歴代興行収入1位である『鬼滅の刃』原作漫画の累計発行部数推移を見てみましょう。
テレビアニメ放映開始時点では16巻までで350万部だったものが(一巻あたり約21万部)、19巻にもなると4000万部(一巻あたり約210万部)、劇場版が公開されると23巻で1億2000万部(一巻あたり約521万部)まで膨れ上がります。
原作の魅力は言わずもがなですが、それにしても驚異的な売上と言えますよね。
日本の人口は約1億2000万人ですから、一人一冊持っている計算です(実際にそんなことはありませんが)。漫画を読む割合は成人の約半数と言われているので、これは明らかに普段、漫画を購入しない層が購入し売上を伸ばしています。
アニメや映画によって鬼滅の刃は、普段漫画を見ない層へのアプローチに成功したと言えそうです。ここまでの規模感になると、映像化による原作使用料が微々たるものでも原作の発行部(=印税)で原作者にも還元されていると言っても差し支えないと言い切れそうです。
出典:株式会社クロス・マーケティング(漫画に関する読み方調査(2022年))
最後に。
『ドラゴンボール』実写化に際して、原作者の鳥山明 氏が残したコメントを掲載します。
ドラゴンボールの実写化といえば、ハリウッドにて怪作となったこもあり、中々に味わい深いです。
結果がどうなったかまだ未鑑賞のかたはぜひ『DRAGON BALL EVOLUTION』にて答え合わせを。