本記事では『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』について紹介します。
※前半はネタバレなし、後半はネタバレ有りの感想です。
サノ評価
⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎・・・3.8/5.0
作品情報
上映時間 | 124分 |
ジャンル | アニメ、戦争 |
監督 | 福田己津央(代表作:TVアニメ 機動戦士ガンダムSEED、機動戦士ガンダムSEED DESTINY) |
あらすじ
C.E.75、戦いはまだ続いていた。
独立運動、ブルーコスモスによる侵攻……
事態を沈静化するべく、ラクスを初代総裁とする
世界平和監視機構・コンパスが創設され、
キラたちはその一員として各地の戦闘に介入する。そんな折、新興国ファウンデーションから、
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』公式サイトから引用
ブルーコスモス本拠地への合同作戦を提案される。
予告
感想(ネタバレなし)
これは観て良かった!
まずターゲットとなっているのは、ガンダムSEEDファン、当時テレビアニメを観ていた視聴者。
劇場版が公開されるまで紆余曲折ありましたが、これは一見の価値あり。正直、取り上げてくれないだろうなと思っていたキャラクター、モビルスーツが総出演!
アクションシーンも最高。最高のお祭り映画だ。
一方で、ドラマパートは好き嫌いがファンの間でも分かれるのでは、という展開もありモヤモヤが無いわけではないが、ガンダムSEEDファンであれば観るべき一作。
詳しくはネタバレありパートにて。
★感想(以降、ネタバレあり)
不満はあるが、迷っているくらいなら観た方がいい。
前述した通り、ガンダムSEEDを好きな気持ちがあれば間違いなく刺さる。全肯定かというと、それは違うのだが、間違いなくガンダムSEEDの総決算であり、ファンへ向けたお祭り映画である。
不沈艦アークエンジェルが沈み、最強のキラが敗北し、ラクスが人質となり…からの、シン、アスラン、キラの無双。イザークやディアッカ、ルナマリア、ムウ、カガリにも活躍シーンが用意される。おまけに、サイ、シホ、カズイ、ミリアリア、イザークの母やキラの両親(ヤマト夫妻)、果てはアークエンジェルの整備班の面々までもが登場してくれる。
登場シーンはワンシーンだけのキャラもいれば、何度も出てくるキャラもいるが、劇場で鑑賞しているこちらとしては、さながらウォーリーを探せ状態である。懐かしさと約20年という時を経た完結編であるという実感が湧き、気持ちが昂るというものだ。
と、両手をあげて絶賛している訳だが、ここからは多少の不満を。
不満ゼロではない
まず、私が鑑賞前に不安視していたのは三点。
①当時のキャラたちにどこまで感情移入ができるか
②DESTINY後ということで、キラ無双、アスラン無双になってバトルシーンを楽しめないのでは?(要するに敵が弱すぎるのでは?)
③昼ドラのようなドロドロした愛憎劇をドラマパートに入れてくるのではないか?
鑑賞後、改めて考えてみると
①は概ね問題なかった。③にリンクするドラマパートに違和感こそ覚えたが、自分はSEEDが好きなんだなと改めて思わされた。
②についても、ライジングフリーダム、イモータルジャスティスという量産機とエース機の中間のような機体を出すことで、冒頭のバトルシーンから画面でも映えつつ、負けることで敵を持ち上げ最終決戦時のストライクフリーダム、インフィニットジャスティス、ディスティニーへとバトンを繋ぎ、圧倒的な勝利に爽快感を覚えた。
・・・問題は③だ。
ドラマパートの雑味
予想はしていたのでやはりとしか言えないが、昼ドラのような愛を語る部分がドラマパートにあり、これが割と物語の根幹を担っていた。
率直に言えば、この愛を語るドラマパートが雑味と感じた。
勿論、人により見解は異なるので個人の感想なのだが、愛だ、愛だと語りすぎて後半にかけて深みを感じなくなってしまった。物語上は当然ながら後半からフックである愛をより多用していくわけで、感情がやや離れていった。愛自体はSEED時代からキラとフレイという昼ドラをしていた訳で、遡ればガンダムシリーズ自体も愛情や母性というキーワードを重要視しているシリーズではある。
それを理解した上でなぜピンと来なかったのかと言えば、ひとつは自分が大人になったのだろうという点。テレビシリーズ鑑賞の気持ちのままであれば受け入れられたものも、この戦争の最中で何を言っているんだ…キラとアスランの絡みは青春漫画をモチーフにしたギャグなのか…とそれまで世界観にハマっていたのに突如、ドラマパートで現実に呼び戻されてしまうのだ。
そしてもう一つ。
これは作品への気持ちがあったからこそだと思うのだが、キラやラクスがそんなテンションでそんなこと言うのか?というノイズ。
SEEDではキラもラクスも幼く、それでも抗い続けるために成長していった。それを受けての続編DESTINYでは、キラとラクスは達観した心を持ち、世界を憂い、自身の戦う場を静かに待ち、運命で決めようとする世界に抗った。そう。特にこの二人はTVシリーズにおいて、精神年齢が成熟し切った描かれ方をしているのだ。対比としてDESTINYでは、幼さを抱えたシンを出してさえいる。この後日談 ─── 約二年後となる本作で、キラもラクスもSEED時代(作品内で四年前)のような精神年齢の描かれ方をしているので、ドラマパートではついていけなくなっていった。
戦場と平和な家庭で垣間見える姿は違うとは言え、キラは四年経ってもSEEDから成長しておらず、ラクスは成長したのかもしれないが、これまで彼女の恋愛描写はほぼなく、あなたそんな大声で愛を語る人だったのね…という違和感が拭えないのだ。
Q&A
Q.事前に何か観た方がいい? → A.できればガンダムSEED、続編のガンダムSEED DESTINYは観たうえで鑑賞した方が楽しめる
Q.TVシリーズを観ないと楽しめない? → A.楽しめない訳はないが、基本はファンサービス作品なので、より楽しめるというもの。
Q.最低限必要な事前情報は? → A.極論なくとも作中で説明はあるが、↓を抑えていれば必要充分ではある。
・コーディネーターという遺伝子操作され頭や身体能力が高い人類がいる。自然に生まれたいから人類をナチュラルと呼ぶ
・コーディネーター(宇宙)vsナチュラル(地球)の戦いが以前複数あった(TVシリーズ)
・ディスティニープランという、生まれた時に役割が決められ、それに最適化した人類を生み出そうとした敵がいた(ガンダムSEED DESTINY)
・ディスティニープランを、キラやラクスといった本作の中心メンバーは否定した
事前に予想されていた展開はあったのか?
15年以上の時を経ての劇場公開ということで、ガンダムファンの間では予告などの情報が出てから考察・予想が多く飛び交ったが、最後に事前に予告などから予想されていた展開があったのかをご紹介する。
ここまでで紹介している部分もあるがご容赦いただきたい。
- キラが闇堕ちする展開 → △ 予告にて、キラ・ヤマト闇に堕ちろ、と明確なセリフがあったが闇堕ちこそしかったものの、自身の内面に抱えた思いをファウンデーション側に利用され、物語の発端を作ることになった。
- アスランの愛機ジャスティスの後継機であるイモータル・ジャスティスに、シンが乗る展開 → ◎ これは大正解。そして、分かっていても冒頭でシンがアスランの愛機の名を冠した機体に搭乗する熱さは変わらない。ジャスティスでのシンは負けてしまうが、これもシンが最後にディスティニーに乗った際、「ジャスティスだったから負けた。ディスティニーなら負けない!」と発言し、言葉通り、そこからディスティニー無双をするので笑いが止まらない。
- 愛の物語でバトルものではないのではないか? → △ キャッチコピーが『私の中にあなたはいます。あなたの中に私はいますか?』だったことで、割と初期から予想されていたが、これは半分正解。バトルものではあるが、物語の軸に愛を持ってきており、これまで個人としての幸せが見えづらかったりキラとラクスの愛情を描いた作品となった。